昆虫食は英語で何という?  

 

所長です。

昆虫食に関する論文や海外の記事をみていると、「昆虫食」は様々な英語で言い表されています。Bug eating、Insect Eating、Entomophagy等々。一つの単語で言い表すとすればEntomophagyとするのが一般のようです。しかし、昨今の昆虫食ブームでEntomophagy という言葉の使用方法に見直しを主張する意見が出てきています。

 

Entomophagyはおよそ20世紀に入ってから論文で使用され、多く利用されるようになったのは1990年代ごろからと言われています。

日本でも昆虫食という言葉が出てきたのは比較的最近です。昆虫食を体系的にまとめてきた昆虫学者三橋淳著の1984年代に出版された「世界の食用昆虫(古今書院)」では、「食虫」「食用昆虫」という言葉はありますが、昆虫食という言及はありません。他にも1990年前に出版された篠永哲、林晃史著「虫の味(八坂書房)」や笹川満廣著「虫の文化史(文一総合出版)」などにも昆虫食という表記は見当たりません。1997年になって三橋氏の著作「虫を食べる人びと」に昆虫食という表記が出てきています。まさに前述の時期と大方一致します。

 

いろいろな論文で考察されていますが、「Entomophagy」という言葉は、これまで昆虫を主食とするモグラやネズミなどの動物(食虫目という分類名がある)の昆虫を食べる行為に使われてきました。

つまり、昆虫食と同様の用語として、「草食(Herbivore)」、「肉食(Carnivore)」、「雑食(Omnivore)」といった言葉が挙げられます。確かにこれらは人間にはあまりあてはめない用語です。

 

しかし近年、Entomophagyは従来の食虫動物の昆虫食性を表す言葉だけでなく、人による昆虫を食べる行為や食習慣として使うことも多くなってきました。

つまり、様々な分野で用いられた結果、広範な意味を持った用語になってしまった。

そういった理由でEntomophagyという表記は誤解を招きやすい用語で改めないか、という意見が挙がってきているというわけです。

 

メキシコの研究者Ramos-Elorduyは「Anthropo-Entomophagy」という表記を提唱しています。

昆虫を食べる人類の営みという意味を込めた用語であり、これがいいえている気もします。

しかし、ちょっと言いづらいし、長い。

 

ちなみに、食用昆虫はedible insectという単語で表すことが多いですが、こちらは昆虫自体を表す言葉ですから、昆虫を食べる人自体の行為や営みを表す言葉を含みません。

生物学者Biologist、昆虫学者Entomologist、人類学者Anthropologist、と並んでEntomophagistというと、昆虫食主義者みたいな印象。

昆虫食研究者をスパッと言い表す英単語はどうしたらよいか、悩みどころです。